“I don’t think so.”――字幕の薦め

 語学の勉強に「映画」は非常に役に立ちます。それは映像を通して感動が高まることで人間の記憶にとどまりやすいからです。私は英語の勉強をかねて、毎日、できる限り1本は、映画を見ることにしています。最近は、ケーブルテレビや CS などがあり、どこかのチャンネルで映画を放送しているものです。
 ところで、外国語の映画を見るとき、「字幕あり」がいいでしょうか、それとも「字幕なし」がいいでしょうか。「吹き替え」はこの場合、まったくの論外です。
 もちろん、字幕の「質」にもよりますが、私は「字幕あり」をお薦めします。字幕を見ながら元の音声を聞くことで「なるほど」と感心させられることが多いものです。そこには単なる「語彙の置き換え」や「直訳」でなく、その言語を話す民族の歴史や文化、大げさに言えば「思惟方法」「世界観」までをも考えるヒントが含まれているからなのです。そして、それが「言語を学ぶ」ということ、「異文化理解」ということなのだと、私は考えています。
 例えば、英語でよく出てくる“I don’t think so.”です。「私はそうは考えない」という字幕はまずありません。「へえ?」「マジで?」「違うわ!」「そんな」など、さまざまです。いずれもその「場」にぴったりの訳が付けられています。
中国語でも同様です。“轻点儿!”は「声を小さく!」ですが、「しっ!」でもいいし、「声が大きい!」と言ってもいいのです。
言語は人の表現の一つです。そして必ず「場」というものが存在します。文法にかなっているか、語彙が正しく使われているかも、もちろん大切ですが、それ以上にその「場」にふさわしい「表現」であるかが重要です。それには、相手側の文化やものの見方を理解する必要があるのです。

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内田慶市

内田慶市関西大学外国語学部教授

投稿者プロフィール

福井生まれ。現在、関西大学外国語学部で教鞭をとる。専攻は「中国語学」。この10数年は特に、「近代における『西学東漸』と言語文化接触」を主な研究テーマとし、さらには、新たな学問体系である「文化交渉学」の確立を目指して研鑽中
パソコンは約25年前に、NEC9801VXIIを使い始め、その後、DOS/Vから「Mac命」に。Mao's Home Page

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