「あるもの」と「ないもの」と

 こちら側に「ある」からといって、相手側にも必ず「ある」と考えるのは、相手を無視した一方的な考え方です。相手も自分と「同じ」はずと考えるのは、「傲慢(ごうまん)」ですらあります。このことが現在の世界の多くの争い事や悲しい事件を引き起こしているのではないでしょうか。
 アメリカにホームステイをしていたときに、ホストマザーのバーバラさんに「しあさって」は英語でどういうのかを聞いたことがあります。中国語では“大后天”といいます。

 私:「明日は tomorrow ですね。では、あさっては?」
 バーバラ:「あさっては、木曜だ。」

 私:「いや、今日、明日……ときて、あさってはどういいますか。」
 バーバラ:「the day after tomorrow だ。」

 私:「そうですね。じゃあ、その次はどういうのですか。」

 バーバラ:「today, tomorrow, the day after tomorrow, this Friday だ。」
 私:「いや、今日が火曜日だとは知らないと、そう言えないでしょう?」
 バーバラ:「だから、 tomorrow, the day after tomorrow、そしたら次は this Friday, this Saturday となるんだ。」
(おいおい、そこに戻るなよ!)

 最後には、「今日が火曜日だと知らないなんて、お前は変だ!」と怒られてしまいました。
 でも、じっくり考えてみると、「概念」はあっても、それに対応する表現方法がない、ということはよくあるのです。言葉を学ぶときには、こういうことも心掛ける必要があります。
金子みすゞさんは、「みんなちがって、みんないい(「私と小鳥と鈴と」より)」と書きましたが、相手を認めること、相手との違いを認識することが、人を理解し、「文明の対話」を広め、平和な世の中を築く第一歩だと、私は考えています。

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内田慶市

内田慶市関西大学外国語学部教授

投稿者プロフィール

福井生まれ。現在、関西大学外国語学部で教鞭をとる。専攻は「中国語学」。この10数年は特に、「近代における『西学東漸』と言語文化接触」を主な研究テーマとし、さらには、新たな学問体系である「文化交渉学」の確立を目指して研鑽中
パソコンは約25年前に、NEC9801VXIIを使い始め、その後、DOS/Vから「Mac命」に。Mao's Home Page

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