第10回 上海での生活の安全性について――日本人家族のとある日常in上海

上海での生活 -安全性について-

ずっと書きたいと思っていたことの一つ、中国・上海での生活の安全性について今日は書きたいと思います。
中国の転勤は単身赴任の率が高いと聞きます。
夫が転勤になった時、転勤先が欧米諸国と比べ中国の場合は家族が帯同する率が低いということです。
上海は日本からも近いので帰ろうと思えばいつでも帰れるし、そういった面から国内の転勤の延長のような感じで単身赴任を選択する方も多いかと思います。
その一方で、家族が中国での生活に不安を感じ、単身赴任を選択するというケースもよく耳にします。
不安の要因としては、住環境や食の安全性、そして子供がいる場合は子供の育児・教育環境が主な項目ではないでしょうか。
今日は自分の知る範囲で上海の教育や住環境、食の安全性についてお話ししたいと思います。

上海の教育環境について

上海は日本人学校は幼稚園から高校まで対応しており、幼稚園に関して言えば日本語で学べる学校がいくつもあります。
レベルも非常に高く、高校卒業後の日本の大学への進学率もとてもいいです。
推薦枠が多いと聞いていますが、それも学校の信頼度に通じるのではないかと思います。
教育に熱心なご家庭も多く、たくさんの子供が学校外の塾に通っています。
上海には日系の学習塾がいくつかあり、塾の名前が書かれた送迎バスが上海の街中をよく走っています。
上海はインターナショナルスクールもたくさんあり、シンガポール系、イギリス系、アメリカ系、ドイツ系などなど多彩です。
現地校の国際部も年々増えています。
インターナショナルスクール、現地校国際部ともにIBプログラムやAPプログラムが充実していて、他国のインターナショナルスクールと変わらない教育が上海でも受けられます。
現地の学校に入学したとしても、それはそれでものすごく教育水準が高いようです。
上海に限らず、中国の都市部の教育水準は国内でも高めだと大学の友人が言っていました。
現地の子供達の毎日の宿題の量を見ても、上海の子供達は本当に夜遅くまで勉強します。
小学校2年生になったら宿題は夜10時までかかると現地のママ友達が言っていました。
元の学校と新しい学校とのカリキュラムの差異や友人関係など、転校には様々なリスクが伴いますが、それらは国内の転校でも同じことですね。
上記の点などを考慮した上で、教育面においては中国・上海は安心して子供を学校に通わせることができる場所だと思います。
むしろ日本にいたら当たり前に地元の学校に通わせているところを、海外転勤をきっかけに現地校や日本人学校、インターナショナルスクールといった複数のオプションから子供にあった学校を選ぶことができるという利点があります。
会社によって子供の学費に対して支払われる補助額も違うと思いますが、日本で公立小中学校に通っていれば学費はかからないところを、こちらの学校に通わせることで多かれ少なかれ教育費の出費が増えることは免れません。
また、インターナショナルスクールも日本人学校も生徒の中には海外からの駐在員家庭の子供も多く、よって卒業でもないのに年中友達とのお別れがつきまとうというのも事実です。
利点もあれば欠点もありますが、少なくとも日本人学校やインターナショナルスクールが充実していて、現地校のレベルも高く、日系の塾もある上海においては、子供の教育の面で心配する必要は全くないと思います。

https://www.international-schools-database.com/in/shanghai ([英語]上海のインターナショナルスクールリスト)
http://www.srx2.net.cn/sjs-hq/ (上海日本人学校 虹橋校)
http://www.srx2.net.cn/sjs-pudong/ (上海日本人学校 浦東校)
http://xuexiao.51sxue.com/schoolByArea/areaCodeS_31_t_2.html ([中国語]現地校について)

住環境の安全性について
夫の同僚や知人の駐在員家族の話を聞く中で、多くの人たちが中国に転勤する前に中国での住環境や食の安全性に対して不安を抱いていたということを言っていました。
多かれ少なからうちの家族もその中の一人です。

自分が中国に来る前、こんな話を聞かされていました。
小学生やそれよりも小さい子を子供だけで外で遊ばせていると誘拐されて地方に連れて行かれる。
子供だけで電車に乗せるのは危険。
スリや当たり屋が横行している。
道で倒れている人を助けると逆に訴えられる。
街でフツーに写真を撮っているだけで連行される。
などなど。
まだ自分は上海に来て1年ちょっとです。
この広い中国本土の中でも行ったことのある街は上海、南京、無錫。
それから本土以外の香港と昔々に仕事で台湾数回。
そんなまだ何も知らない自分がとても『中国では、』と言い切ることはできませんが、上海に10年以上住んでいる知人たちや子供の友達ご家族に聞いても、これらの被害にあったことがあるという人はいません。

うちは子供達だけで地下鉄もしくはバスで学校に通わせています。
スクールバスは高いので使っていません。
子供達の年齢は上から17歳(男)、15歳(女)、13歳(男)、7歳(女)で、去年の時点でまだ12歳だった次男と6歳だった次女二人で地下鉄やバスで学校に通わせたりもしていましたが、全く問題ありませんでした。
むしろ毎回のように一番下の娘は電車やバスの中で席を譲ってもらっていたようです。
ちなみに日本とは違い、中国ではちっちゃい子供にも席を譲るという習慣が驚くほど定着しています。

一方で、以下のような行方不明になった子供達を探す情報サイトが存在しているのも事実です。
https://yibo.iyiyun.com/huijia/zhuanti.html

中国で日本のように4、5歳で一人ではじめてのお使いに行かせることができるかどうかは、中国の中でも住んでいる地域や環境によって違いがあるかと思います。
中国全土で行方不明になる子供の数が日本よりも遥かに多いことは事実です。
しかし、日本の人たちがこのような中国のニュースを聞いて想像するような、街のあちこちに誘拐しようとする人が潜んでいて、少しでも子供が一人になろうものなら連れ去られるといったようなイメージは全く事実ではありません。

今や街の隅々に防犯カメラが設置されていて、どこかでものを落としたらそれを誰が拾ってどこに持っていったかまで全てわかるような時代になっています。
中国の街の防犯カメラシステムも日本ではネガティブな報道が多いですが、いろいろな面で役に立つことも多いと思います。
防犯カメラがあるから街から犯罪がなくなる、ということは理想かもしれませんが、少なくとも自分たちや子供達のことも見守っていてくれていることは事実だと思います。

バスの中にも駅のホームにも防犯カメラが付いています。
街の中にも本当にたくさん。交差点には驚くほどいくつもあります。
もしスリや当たり屋に遭遇しても警察にお願いすれば、きっとカメラで検証してくれるんじゃないかと思います。
もちろん道で倒れている人を助けて逆に訴えられても、ですね。
ちなみに防犯カメラは今や山手線の中にも設置されたそうですね。

それから、街中でフツーに写真を撮っていても連行されません。
交差点に立っていた警察官の目の前で交差点近くのお店の外観を携帯で写真撮ったりもしましたが、一切何も言われませんでした。

何を撮ったらいけないのかは自分にもまだよくわかりませんが、撮っていると呼び止められることもきっとあるのだと思います。
何を撮ると呼び止められるのか自分もぜひ知りたいと思うので、今度ちょっと調べてみたいと思います。
わかったらみなさんにもシェアします!

先日道でこんな場面に遭遇しました。
ダンボールやゴミを自転車で運んでいる人が交差点で倒れてしまったんです。
そのそばを走っていた配達のお兄さんを含めた数名の男性が、すぐにバイクを停めて走り寄ってこのおじさんを助けていました。
転倒した拍子に自転車の荷台に積んでいたパンパンになったゴミ袋が落ちて、中からゴミが飛び出して路上に散乱してしまったんです。
そんなゴミもこのお兄さんたちがパパパっと拾って袋に戻してあげていました。
上海でこんな現場は決して珍しくはないと思います。
どんなに急いでいる配達員でさえも街で困っている人がいれば放っておけないし、ゴミだろうがなんだろうが嫌な顔一つせずに拾って助けてあげる人たちです。
もちろん、転倒したおじさんだって助けてくれたお兄さん達を訴えたりしません。

『おじさんが転倒した交差点。たくさんのゴミが散乱していましたが、この写真は片付けた後です』

『おじさんが転倒した交差点。たくさんのゴミが散乱していましたが、この写真は片付けた後です』

『転倒した自転車と助けてあげたお兄さんたち』

『転倒した自転車と助けてあげたお兄さんたち』

結論ですが、上海は(きっと上海以外の別の街も)日本で言われているような怖い街では全くないということですね。

食の安全性について

自分が中国に来て一年ちょっと経ってつくづく感じることは、現在の日本国内の風潮としてある中国製品・中国産への拒絶反応の根拠があまりにも乏しいということです。
昔の餃子事件や様々な中国製造の食品に関する事件を、いまだに日本の人たちは引きずっているような感じがあります。
良いニュースもたくさんあるのにそれらは放映されず、中国に関する面白おかしな事件ばかりが伝えられるので、いつまでたってもそんな悪い印象が拭い去られることなく日本の人々の記憶の中に残り続けているように思います。

カナダに住む知人が東北大震災以降しばらくの間、寿司を食べる時に「この海苔はどこ製?」と聞くようになったと言っていました。

中国産や中国製品に対する日本の人たちのネガティブなイメージを耳にするたびに、きっと日本の製品や食品も海外でいつまでもそう思われているのだろうなぁと思います。

うちが家族で中国に引っ越すとき、子供の友達がふざけて「中国のタピオカはタイヤで作られてるから気をつけろよ」と言ったそうです。
もちろん冗談で言ったのはわかりますが、それでも小学生の間でもそんな話が出てくるくらい中国の食品への変なイメージが定着してしまっているのだなぁと感じました。

先日大学でイラン人と韓国人の友達と話しをしていた時に、日本では中国産の食品に対するイメージがあまり良くないと話したらとても驚いた様子で、「チャイニーズマーケットは新鮮で有名なのになぜ?」と聞かれました。
日本があまりにも中国産の食品に敏感になってしまっているのかな、とも思いました。

『地元のスーパー。野菜の種類もたくさんあります』

『地元のスーパー。野菜の種類もたくさんあります』

『地元のスーパーの野菜売り場』

『地元のスーパーの野菜売り場』

『いろいろな鳥の卵』

『いろいろな鳥の卵』

そういった様々な理由からきっと中国に転勤が決まった時に、小さい子供がいるご家庭などは家族が帯同するのを不安に思ったりするのではないかと思います。
自分は化学者でもなければ食品の成分を実際に検査した結果なども調べたことがないので、あくまでも日常生活している中での感覚的なことしか言えませんが、こちらで日頃食べている野菜も果物も日本と変わらず美味しいです。
来たばかりの頃は人参も洗って皮をむいて調理していましたが、最近は皮もむかずにきれいに洗ってそのまま食べちゃいます。
筍や椎茸、キクラゲなどなど日本では高価でちびちび使うような食材が手頃な値段で買えるので、それだけでも自分にとっては中国生活からの恩恵は大きいです。

キッコーマンのお醤油もキューピーのマヨネーズも中国の工場で作られているものを使っていますが、味にうといせいか自分は日本製も中国製も違いがわかりません。
値段もタオバオでキッコーマンのお醤油1.8Lが32元。
キューピーのマヨネーズは1kgで28元です。

上海も街のいたるところにマーケットがあります。
最近はこじんまりとしたスーパーが増えてきているようで、自分で精算するセルフサービスのスーパーもよく見かけます。
マーケットもスーパーも朝が一番混んでいて、理由を聞いたら中国ではみんな新鮮で質の良い食材を買うために朝一番にマーケットに行くそうです。
こんな話からも、中国の方たちがどれだけ食にこだりがあるかが理解できます。

『今年の2月でクローズした地元のマーケット』

『今年の2月でクローズした地元のマーケット』

こちらの動画は上海の中心部の徐家汇にあるマーケットで見つけたピーナッツ醬の即売所。
右側がピーナッツソースで左側が黒ごまです。
ピーナッツ醬は火鍋のディップソースに使ったりします。
黒ごまの方は白玉や胡麻団子の餡によく入っていますよね。
売り場の近くに行くとすりゴマのいい香りが漂っていました。

中国産の食材がどれも悪いように思うのは間違った先入観だと思います。
日本もいろいろな食品会社が異物混入や賞味期限の改ざんなどでニュースになりますが、時間とともに消費者の記憶から薄れていきます。
それは過去のネガティブなイメージを塗り替えていくようなポジティブなイメージやニュースが次から次に入ってくるからだと思います。
問題があった会社の『過去こんな事件があったけれど、今は一生懸命頑張っている』といったようなメッセージがテレビのコマーシャルやドキュメンタリー、インタビューなどを通してもよく伝えられていますよね。

日々それらの製品と接する中でも信頼度は回復していくし、問題があった企業もだんだんと悪い印象が庶民の記憶から薄れていきます。
以前メグミルクも食中毒問題がありましたが、あの事件以降地元のスーパーではメグミルクのヨーグルトが一番安かったのでずっと買っていました。
そんな理由もあってか、いつの間にかメグミルクに対する不安感などは消えていました。

車や電化製品のリコールも同じですよね。
でも中国の食品に関してはそれらのポジティブな情報が日本で報道されないので、いつまでも日本の人たちの頭の中にある昔の中国産食品の悪いイメージがアップデートされずに残っているのだと思います。
中国でどんなに美味しいものを見つけても、日本にお土産で持っていっても喜んでもらえないと思うと本当に残念です。

こんなに世界の情報が手軽に入手できる時代になっているのに、日本はいつまでも中国の昔のイメージを持ったままで、だから実際に中国にくるとみんな驚くのだと思います。

まとめ
今回は上海の生活の安全性について子供の教育環境、住環境と食の安全性についてまとめてみました。
上海の日本人学校、インターナショナルスクール、現地校、現地校の国際部とどの学校を選択したとしても、幼稚園前から安心して通わせることができる教育環境だと思います。
日本でよく中国について不安いなるようなニュースが報道されますが、少なくとも自分の知る上海は子供にも外国人にも本当に優しい街です。

中国の食に関する安全性ですが、野菜も果物もとっても新鮮で美味しいです。
水道水が飲めないのはちょっと不便かもしれませんが、上海の水も年々良くなってきているようです。
ペットボトルのお水がとても安いですし、学校などでは飲み水の給水タンクがいたるところに設置してあり自由に飲むことができます。
ちょっと古い建物のトイレではティッシュが流せず横のカゴに入れるようになっていたり、道に犬のフンが置き去りになっていたりするところを見ると、日本とちょっと違うなぁと思ったりすることもあります。
しかし住環境にしても食の安全性にしても、日本で聞くような怖いニュースのようなことは全くなく、特に上海は多くの駐在員の奥さんたちが日本に帰国したくなくなってしまうような本当に住みやすい場所です。
もしみなさんの中に中国への転勤でご家族が帯同するかしないか迷っている方がいらっしゃったとしたら、ぜひ日本で報道されている中国に関する一部的な情報だけを頼りにせず、しっかりと自分自身で見たり調べたりしてから決断されることを強く強くお勧めします。

こちらは大学も子供の学校も夏休みに入り、自分も日本に一時帰国します。
上海に戻りましたらまた記事を書きたいと思います。
どうか皆さん、素敵な夏をお過ごしください!

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東山志帆上海交通大学外国語学院博士課程

投稿者プロフィール

 現在、上海交通大学外国語学院博士課程に在籍。研究分野は多文化的アイデンティティー、異文化への順応、教育機関における多文化的アイデンティティーを持つ児童生徒学生たちの脆弱性、異文化理解教育、教員教育、日中間の更なる相互理解など。2018年4月に夫の転勤に伴い、17歳、15歳、13歳、7歳の子供たちと共に上海に移住。中国に来る以前にカナダでの育児経験もあり、著者自身学生時代をカナダで過ごす。日本在住中は塾や公立中学校の英語科非常勤講師としてこれまで約15年間にわたり教育に携わってきた。日本社会、特に教育機関における帰国子女や今後日本でさらに増えるであろう海外からの留学生や移民の子供たちに対する更なる理解やサポートの充実化、日中の相互理解に向けた取り組みや双方の留学生交流の促進などが現在の主な研究テーマ。

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